予約や顧客管理のシステムを「変えたい」と思っても、いちばん踏み切れない理由は、新しさへの不満ではなく、「これまでの顧客やペットの記録を、新しいシステムに持っていけるのか分からない」という不安ではないでしょうか。
これは、正しい不安です。代表の関は、業務システムの受託開発でシステムの入れ替えを手がけ、いまも既存システムをクラウドへ移す案件でデータ移行に取り組んでいます。システム移行の現場でよくあることとして言えるのは、データの移行は「できる/できない」の白黒ではなく、「どこまで・どんな形で移せるか」で結果が大きく変わる、ということです。
この記事は、動物病院向けのカルテ移行の記事の姉妹編です。トリミングサロン・ペットホテル・ペットショップ・動物病院と、業種をまたいで共通する乗り換えの勘所を、特定のサービスをすすめない立場で整理します。
業種は違っても、つまずく所は同じ
扱うデータは業種ごとに違います。サロンならトリミング履歴と写真、ホテルなら宿泊予約とワクチン証明、ショップなら販売履歴と会員ポイント。それでも、乗り換えでつまずく原因は共通しています。
いちばんの理由は、他社のシステムに引っ越しやすい形でデータを持っている製品が少ないことです。会計データのような共通フォーマットと違い、顧客台帳や予約には「この形で出せば他社でも読める」という業界標準がありません。そのため、書き出せても、項目の対応づけを一つずつ決め直す必要が出てきます。
乗り換えで、特に切れやすい「つながり」
単体の情報より、情報どうしの「つながり」が失われやすい部分です。
- 予約・来店履歴と顧客の紐付け — 誰の、いつの予約だったかが外れる
- 写真や添付と顧客・ペットの紐付け — トリミング前後の写真や同意書が、どの子のものか分からなくなる
- ポイント・回数券・サブスクの残高 — 顧客名は移せても、権利や残高は引き継げないことがある
名前・連絡先・ペットの基本情報といった「台帳」そのものは、比較的移しやすいところです。失われやすいのは、台帳と他のデータを結ぶ線のほうです。
移す前に決める「何を必ず残すか」
全部をそのまま移そうとすると、費用も時間もかかり、結局乗り換えられません。おすすめは、移行の前に「何を必ず残すか」を先に決めることです。
- 今のシステムから、自分でデータを書き出せるかを確認する(取り出せない契約だと、乗り換えの主導権を持てません)
- 営業に本当に必要なデータ(継続中の顧客・直近の履歴・台帳・使用中のポイント)を優先して移す
- それ以外は、読める形(PDFやCSV)で参照用に保管する
- 一定期間は新旧を並行させ、抜けを見つける
「何を失ってよいか」を先に決めることが、そのまま移行の設計になります。
私たちの立場
トミースタジオは、飼い主向けアプリ「わんケアlog」を自社で企画・開発・運営していますが、ペット事業者向けの予約・顧客管理サービスは売っていません。だから「このサービスに替えましょう」とは言いません。できるのは、システム移行の現場で扱ってきた一般的な経験をもとに、「今のデータが何を・どこまで移せるか」を一緒に確認し、必要なら移行やつなぎ込みをつくることです。なお、ペット事業者向けの受託実績はこれからで、まず小さく一緒に始める形をおすすめしています。業種をまたぐ連携の考え方は、システム連携の記事でも整理しています。
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